先生の手が触れる時


「………馬鹿…」

そこには、ノートいっぱいを使って描かれた
少女の絵を見て泣く私の横姿があった

「……ぅ……ーーっ…ふ」

なんで、他の人にしなかったの?
なんで、私なんかを描いたの?
先生を苦しめた張本人なのに

思わずその場にしゃがみこんで
口に手を当てる

ダメだ。泣いちゃダメだ。

早く、ここから出なきゃ

そう思い、なんとか震える体で美術室を逃げるように出た時

「…………遠野?」

懐かしい声が廊下に響いた


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