先生の手が触れる時

「………」

これを見たのか。

「これを見て……泣いたのか…?」

確かに彼女は美術室から泣きながら出てきた

俺は頭をかきながらため息を落とす

「………くそ…」

どうして俺はいつも遠野の手を離すんだ

今になって推測が確かなものになったことにやるせなさが押し寄せてくる

ずっと苦しんでたのか?

なぁ、遠野

ずっと君は俺の目の前で笑いながらも暗闇を抱えていたんだろう?

その暗闇に負けないように必死で笑っていたんだろう?

ごめんな、気づけなくて。

もう絶対お前を苦しませたりしないから
だからもう
一人で抱え込まないでくれ。

もう俺の傍から離れないで

俺も、もう離さないから

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