先生の手が触れる時

先生は前と変わらずコーヒーをいれて、差し出してくれる

私がそれを受けとると、先生は首をかしげた

「……話って?」
「…謝ろうと、思って」
「謝る?」

先生の眉間にしわが入る

「…あの日、いきなりふったこと」
「………気にしていないよ…仕方ないことだったんだ。どんな理由があろうと…俺の隣にいることが君の幸せなんだとは思っていない」

その言葉に涙腺が緩む

違う。

私の幸せはあなたの隣。

あなたの隣にいることなのに…

「………違う…」
「え?」
「……私は、幸せでした。先生と過ごす美術室での時間も…出かけたことも……先生がいるだけで、生きてきたなかで一番幸せだっ…た…」

泣きながら言葉を紡ぐ

先生は大きく目を見開いた
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