先生の手が触れる時

どうか。伝わればいい。

私のこの気持ちが、いつかあなたを支えられるといい

いつか、思い出してくれればいい

先生は一歩、私に近づくと流れる涙に触れる

「……なら、俺のそばにいてくれないか」
「……………え?」

うまく言葉が飲み込めない

そばに?

先生の、そば?

「………遠野、俺はっ……」

先生がそう言いかけたときだった

『緑川先生、緑川先生。至急職員室にいらしてください』

そう放送が流れた

熱をもった頭が冷めていく

私は、そばにいちゃいけない。

「いってください」

沈黙を破ったのは私の方だった

「……お願い」

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