先生の手が触れる時

「……今日は、帰ります…また日を改めて…話しましょう?」
「…………あぁ、わかった」

先生は大きくため息をついて、私の頬に伸ばした手をおろした

日もだいぶ暮れているから、先生も諦めたのだろうか

私は先生に背を向けると、ドアに向かう

そして


「それじゃ、先生。さようなら」


そう振り向いて笑った

先生は一瞬、不思議そうな顔をしたけれど
困ったように笑ってくれる

「……またな」

その私の大好きな笑顔が見れただけで充分。
何も要らない。

ありがとう、先生。



< 313 / 342 >

この作品をシェア

pagetop