先生の手が触れる時

「うん、そうだよ。……君は…?」
「先生は…お姉ちゃんの大事な人、なんだよね?」

お姉ちゃん?
まさか…

「……君は…凪の、弟かい?」

こくり、とその子が頷いた

「なんで……凪の弟がここに?」
「……お姉ちゃんを…助けてほしいの!」
「え?」

その子が必死な顔で俺を見つめる

助けて、ほしい?

凪、君はまた…一人で何かしようとしてるのかい?

「さっき…お父さんが……お姉ちゃんのアパートに向かってるのを見たんだ…お母さんがね……もし、お父さんを見たら教えてって…お姉ちゃんが危ないからって」
「っ!」

体が冷えていくのが分かる

「でも、僕…けいたい、忘れちゃったの……でも、お姉ちゃん危ないから…学校なら僕、何回か来たことあるし…ここにはお姉ちゃんの大事な人がいるって思ったの」

そこまで聞いて思わず立ち上がる

つまり、凪の家に今、父親がいるということだ。

なんだ?
この嫌な予感は…

凪は、深山の家にいるんじゃないのか?


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