先生の手が触れる時


私は、暗闇に落ちていく瞬間を感じた

何度も何度も落ちた

這い上がることすら怖くなった

這い上がった先に、父親がいたら?

逃げ場はないとそう思い知らされそうで怖い

「……ん~!ん!」

口を塞がれ
そのまま父親の手が乱暴に私の服を乱していく

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ

「暴れるな。凪は良い子だろ?」

冷たいそんな声が耳元に響く

『泣くな、凪は良い子たろ?』

そんな優しかった父親の声がリンクする

いつから私たちは狂ったの?

いつから私たちは

父親と娘ではなくなったんだろう

流れた涙は誰にも知られることはなく
床に落ちていった



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