先生の手が触れる時

「…信か?」
『おう、どした?』
「凪と父親が今、一緒にいる…たぶん、アイツは自分で決着するつもりだ」
『………その子、変なこと考えてないだろうな?』

その言葉にハンドルを握る手に力を込める

「……その前に…絶対連れ戻す…だから、その後お前の家に…凪を連れていきたい……頼んでいいかな?」
『あぁ…それは構わない…』
「ありがとう…じゃ」
『おい、雪夜』

切ろうとした電話をもう一度耳に戻す

「ん?」
『……守れよ、絶対』

その言葉を聞いて、ぐっと体に力をいれた

「あぁ」

そういって、電話を切る

車を走らせながら今日の凪の姿を思い出す


ーそれじゃ、先生。さようならー


あのとき、もう俺に会わないつもりだったのか?
俺を守るために別れた?

なんで君はいつも
そうやって一人で抱え込むんだ

どうして俺は、君を守れないんだ…

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