先生の手が触れる時

どのくらい走ったか分からない
長かったか、短かったか
そんなことも考えられないほど切羽詰まっていた
俺は夏休みに来たアパートの前に車を止めて、走り出す

そして“遠野”と書かれた部屋のドアを迷いなく開けた

玄関からのびる廊下の先にリビングが見える

そこに男と思われる人影の上に乗り、首に手をかける凪の姿があった

「やめろ!凪!」

俺はそう叫んで走りだし、凪の手を掴んだ

凪はハッとして俺を信じられない、という顔で見つめてきた

急いで彼女の下にいる父親をみると意識はあるようだった

彼もまた、俺を驚いてみていた

「……先…生?……どうして…」

俺は凪を無理矢理立たせる

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