先生の手が触れる時

「凪…君は、一人で生きてるんじゃない。君を守るために深山も吉宮も、弟も動いてくれたんだ…」
「………え?」
「深山なんて、泣いて助けてあげてくれって学校まできて、頼んでくれた…弟も…不安だっただろうに、学校に来て、凪を助けようとしてくれてんだよ…」

俺の言葉に凪の瞳がどんどん見開かれ、大きな瞳に涙が浮かぶ

「…う……くっ…あ…あぁああっ…」

凪はそのまま泣き崩れる
俺はそっと凪の肩を引き寄せる

「……もう、死ぬなんて思わないでくれ……君を亡くしたら、俺は…どうすればいい?…それぐらい大事に思っているんだ…」
「……せん、せい…」
「…遺される身も辛いものなんだ…それは、凪も分かるだろう?」

そう問いかけると、腕の中で凪がピクリ、と動きそっと俺を見上げてくる

俺は涙でぐしゃぐしゃの凪のおでこに自分のおでこを寄せて

「……これから、俺は凪に汚い部分を見せる…だから、少しの間外にいてくれないか…」

そうささやいた

でも、凪は首を横にふって俺の頬に手を伸ばす

「………ちゃんと、見届けます…今の私にできるのは…それぐらいだから……」

あぁ、そうだ。
この子はこういう子だ。
真っ直ぐで、優しい子だ。
だから、好きになった

「…わかった」

俺はそう頷いて、リビングに足を向けた

後ろに凪がいるのを感じ、一回だけ彼女の手を握りしめると
彼女もまた、握りしめてくれた

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