先生の手が触れる時

そっとリビングに足を踏み入れると
床に座ったまま呆然とする凪の父親の姿があった

俺は意を決して父親に近づく

「………俺は…何をしてきたんだ?」

声をかけようとした時、凪の父親が先に口を開いた

え?

思わず父親を凝視する

凪も怪訝そうに眉を寄せている

「……千代子……千代子は……どこだ?」

虚ろな目で問いかけられ、俺はぎゅっと手を握りしめた

そしてそのまま、凪の父親の襟首を思いっきりつかむ

カッと頭が熱くなるのがわかる

「いい加減目を覚ませ!……いいか。あんたが手を出してきたのはっ………自分の娘だ!凪だ!千代子さんじゃない!」

その言葉に父親は虚ろだった目を大きく見開き、俺の後ろに立っている凪に視線を注ぐ

「……凪……?」



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