先生の手が触れる時

凪side


パンッ


乾いた音が耳につく

頭は熱くて、何かが溢れてくるように涙がこぼれた

父親を叩いた手がジンジンと痛む

でもそれよりも
ただ、先生の言葉が胸に痛くて

『あなたが……もし凪の父親でもなんでもなくて…俺が…教師になってなかったら…ただのこの子の彼氏だったら…俺はあなたをっ…』

先生。

『殺していたかもしれない』

そう呟いたあなたは誰よりも辛そうだった


「………凪…?」

先生が、呆然と私の名前を呼ぶ

「…ずっと…死にたかったし……私だって殺したいと思った……」
「っ!」
「……いつもお父さんが…お母さんの名前呼ぶと…手を出されてる事よりも…もっとむなしくて…苦しくて…辛かった」

涙がどんどん頬を伝い
床にポタポタと落ちていく

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