先生の手が触れる時

「…お父さん………」

私は立っている父の胸を叩く

何度も何度も行き場のない怒りをぶつけるように

「…わたし、生きてるんだよ……お母さんの代わりなんかじゃない!遠野凪として!生きてるの!」
「……っ」

父が息を飲むのがわかる

「私は、お母さんじゃない……お父さんの娘なの!あなたの娘よ!」

そう叫び、段々と足から力が抜けていき私はずるずるとその場に座り込む


しばらく誰も何も言わなくて

静かな永遠にも思える沈黙が流れた

そして

「………あ……俺は……俺は…俺は」

父はそう何度も口にして崩れるように膝をついた

「……すまん……凪…すまなかった……本当は……分かっていたんだ…お前が…千代子じゃないことも…でも……気づいたときにはもう…戻れなかった………」

何かに耐えるように父は両手を握りしめる

その手から血が滲んでいるのを私は呆然と見つめていた

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