先生の手が触れる時

先生の手が触れる時



それから、私と先生はアパートを後にした

父はもうしばらくあの家にいる、と言って
ただソファに座っていた

私は先生と手を繋ぎながら先生の車に乗る

そして
車で先生がここまで来た経緯を聞いた

優人が父を見て先生の元へ向かったこと。
私が最後に凜に送ったメールを見て凜が駆けつけてくれたこと。

全部話終えた先生はひとつため息をついた

「……もし、弟も、深山も…来るのがあと少し遅かったら……俺は、君を帰したことをひどく後悔しただろうな」
「………ごめんなさい」

私がうつむきながら呟くと
先生はポン、と頭に手をおいた

「……謝るのは、俺の方だよ。凪に向き合うことが怖くて…逃げてた……ごめんな」
「そんなこと…ない……先生がいたから私は…」

そこまで言って、言葉につまる
先生もそのまま前を向いて押し黙った


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