先生の手が触れる時


6年後…


「絵理子さん!変じゃない?」
「大丈夫よ、すっごい綺麗!」
「凪~綺麗だよ!」
「凜…」
「とても綺麗だわ」
「千冬さん…ありがとう」

私は何度も鏡の前で確認する

白いドレスがその度にふわり、と揺れた

そのとき、外から慌てたような声がする

「困ります、ここは女のかたのみ入れるので!」
「え、そうなんですか…優人ダメだって」
「えー…」

そんな優人と晴夏の声が聞こえ、皆で苦笑いをこぼす

「まったく…優人!」
「うわ!」

そういって、千冬さんが部屋を出ていく

相変わらずな二人だわ。

「……新婦様、そろそろお時間です」

そう声をかけられ
きゅっと表情を引き締める

そして
絵理子さんと凜に向き合う

「絵理子さん、凜…千冬さん」

二人は涙をためて私を見ている

「絶対、幸せになりなさい」

絵理子さんがそう言うと、彼女の足元にいる小さい女の子が口を開く

「…凪ちゃんきらきらぁ」

私は少しだけかがんで信さんと絵理子さんの子供、春紀ちゃんの頭を撫でる

凜は私の手をとるとぎゅっと握り締めた

「……大丈夫よ。本当に、幸せになってね」

私は深く頷くと、新婦控え室を出る

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