先生の手が触れる時



うそ…


その視線を追って思わず目を見開く

夢でも見てるのかな
そう思ってほぼ無意識に小さくその人を呼ぶ



「お…父さん……?」



お父さんは少し痩せてて、でもどこかスッキリとした顔をしていた

父は少し気まずそうに微笑む

「久しぶりだな……凪」
「うそ……」
「…綺麗に、なったな」

そういって父は瞳を潤ませる

私の視界もどんどんぼやけていく

父とはあの高校2年の冬から会っていない
手紙はもらっていたけど、いつも住所が書いてなくて返事ができていなかった

「……雪夜…どうして…」
「やっぱり、ヴァージンロードは父親と歩きたいだろうと思ったんだよ」

そう優しく笑う雪夜に向かって、力の入らない手でポス、とグーパンチをお見舞いする

「バカ…」

それを嬉しそうに受け止め、雪夜は私の頭を撫でる

「はいはい……じゃあ俺は、先に行くよ」



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