先生の手が触れる時
『…わたし……手を伸ばしたの……でも』
そう言った彼女のひどく怯えたような
混乱した顔を思い出す
『たす……けて……』
微かな彼女からのsosに
俺は気づけなかった
「恋人……親…いじめ…いろんな要因はあるわね」
「……暴力…ですか?」
「おそらくね」
俺は少し疲れのある遠野の顔を見つめる
「遠野…」
「まぁ、起きたらこの子にそれとなく聞いてみてください。わたし、これから出張なのよ」
「…はい」
じゃあ、と保険医の先生が出ていくのを見届けて
遠野に目線を移す