先生の手が触れる時

「僕も理由までは…なにしろ娘とは別で住んでいるんですよ」
「そう、なんですか?」
「はい。迷惑かけたくないとかで」

そう笑う父親を見つめて、俺はやはり拭いきれない違和感を感じながらも
それ以上は聞けなかった

保健室に戻ると、不安そうな顔で俺を見つめる遠野と目が合う

「とお…」
「じゃあ、凪、行こう」

遮るように父親が言う

「…わたし、午後の授業出たい」
「凪、今日はもう止めとこう。な?」

父親はベッドに腰かける遠野の肩を抱いて半ば強引に遠野を立たせる
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