先生の手が触れる時
それは、初めて、自分のなかにある気持ちを話した瞬間だったと思う
「…そいつは、いつも何かに怯えてて…」
俺は話しながら
遠野の表情を思い出す
俺に抱きついた後に見せた怖がる姿
「…でも、たまにとても強くて…でもやっぱり我慢してて」
『…わたし……手を伸ばしたの……でも』
「…俺は…そいつの暗闇を知りたい。だけど、分かんないんだ…あいつを苦しめてる暗闇の一部しかまだ…俺は知らない」
そうだ。
俺はまだ、なにも分からない
彼女についてなにも知らないんだ