【壁ドン企画】傍にいさせて
「あのバカ!バカ!」

乱暴に玄関が開けられて、少ないボキャブラリーで暴言を吐く友人は涙を浮かべていました。

それだけで嫌な予感がしていたのですが、目が合ったらそれが的中したと覚悟しました。

胸倉を掴まれたと思ったら、そのまま壁に叩きつけらたのです。

「なんでよりによって、今日!なんで女なんて連れてくるのよ!」

叩きつけられた壁に沿ってずるずると床に座り込んだ僕の傍に膝をついて、友人の目からついに涙がこぼれました。

背中が痛くてこちらのほうが泣きたいくらいなんですけど。

今日は何の日だっただろうか、と友人の肩越しにカレンダーを見るとハートマークと19:00~の記載がありました。

そうだ、ずいぶん前からお付き合い記念日だとかって言ってた気がする。

あれから3年経ったんだねぇ、素晴らしい。

「浮気されてたのかなぁ」

3週間、3ヶ月、3年ってヤツですか?

今まで逐一貴方たちの報告を聞いていましたが、彼とずいぶん順調のように聞いていたのに。

いったいどうしたらそんな状況になるのか、全く理解できません。

先を促すように見つめていると、友人は僕の肩に顔をうずめてぽつぽつと話を続けました。

「仕事で遅くなるっていうのは我慢できる。私だって急な仕事とか入るし、わかるよ。責任持ってやらなきゃいけないし」

肩が友人の涙で濡れるのを感じました。

しっかりしろ、と叱咤するべきか、優しく諦めろと諭すべきか。

悩んでいる間に、玄関の外から大きな足音が聞こえてきました。
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