愛されたガール
初対面の印象は、とっても背の高い男の人。
身長が145センチしかない私が190センチオーバーのタクミさんの視界に入るには、つま先立ちで背伸びしないといけません。
いつも一生懸命顔を見上げていたおかげか、私にはなぜかタクミさんの表情の些細な違いを見分けることができました。
これは愛の力に他ならないと思うのです。部下になったのはもはや運命です。
通訳を始めたのはその頃からです。
タクミさんってば背が高いだけでなく、無愛想、無口、無遠慮の、ないない尽くしの男性だったのです。
私が入社して勝手に通訳を始めるまで、タクミさんとまともに会話できる人は片手で数えるほどしかいませんでした。
私は使命感に燃えました。
タクミさんの魅力を皆さんにお伝えしなければと余計な心配をしていました。
最初は当然嫌がられます。
勝手に変換した言葉が間違っていた時など、眉間に深いしわが刻まれていきました。
知らない人が見たらきっと小学生を虐めているその道の怖い人にしか思えません。