愛されたガール

でも、私は知っていたのです。

タクミさんはとっても優しい人なのだと。

手の届かない場所に置いてある書類はさりげなくとってくれるし、間違った数字で伝票を発行した時も怒らずフォローしてくれて、残業続きの忙しい日は甘いものを買ってきて労ってくれるのです。

……これが惚れずにいられますか。

思い余って愛を告げた日のことははっきりと覚えています。それは、粉雪の降るバレンタインでした。

“タクミさん、好きです”

タクミさんの鞄の中には私の通訳のおかげでタクミさんを恐れなくなった女子社員達からの義理とも本命ともとれるチョコレートがぎっしり詰まっていました。

私は通訳を買って出たことを後悔していました。

だって、タクミさんとってもおモテになるんですもの。

それもそのはず。

無愛想、無口、無遠慮の壁を取り外してしまえば、タクミさんはお仕事熱心で、冷静沈着で、色気の溢れる大人の男性だったのです。

私は次々と現れる恋のライバルに焦り、戸惑い、嫉妬していました。

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