すずめ日記
走り終わった幸子は 大声で泣きながら私に抱きついた。



「これで良かったんやね……」


何度も何度も繰り返した。





リレー後。

幸子は、自分に集まる冷たい視線にずっと耐えていた。


冷たい視線は幸子だけでなく、私にも投げかけられていた。



「障害を持って頑張ってる芳樹くんを相手に、『なにがなんでも抜け!』って普通、言うか?
あの先生、勝つことしか考えてへんのん違う?」



聞こえよがしに、あちらこちらで囁かれていた。




閉会式後。
芳樹くんがお母さんと、泣き崩れる幸子のもとにやって来た。



「ありがとう!」


眼を真っ赤にして、幸子の手を強く強く握って言った。





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