ピンクな理想、グレーな現実
大学の同級生だった夫と結婚して五年目。

今では四才と二才のこどもがいて、二人とも三十才になった。

可愛いこどもに、おだやかで優しい夫。


私が平和に暮らせるのも夫のおかげだし、体調が悪い時は家事もこどもの世話も代わりにやってくれる。


平凡だけどこれ以上望むものがないくらいに恵まれている。

不満なんて言ったら、罰が当たるんじゃないかと思うくらい。


でも......、欲張りすぎなのは分かっているけど、時々思っちゃうんだよね。

もっとときめきがほしいなぁ、とか、あの人と結婚していたら違ったのかなぁ、とか。



......さてと、こうしていても仕方ない。

夫の食べ終わった食器を片付けるために立ち上がる。



「疲れて帰ってきて、美味しいごはんがあると、疲れがふきとぶよ」



食器を下げようとすると、嬉しそうにそう言う夫になんだか照れてしまって、今度は私が生返事をする番だった。


さっきまで生返事ばかりされてイラッとしていたけれど、たった一言で機嫌が良くなった単純な私は、気分良く皿を洗う。
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