『へるぷ』
「あたし……ずっと晃汰が好きだった。
ずっと好きで、晃汰が失恋するたびに、あたしだったらそんな気持ちにさせないって、ずっと思ってた。
だから……晃汰と付き合いたい」
ひよりそうになったけど、最後まで言い切った。
この言葉を伝えるのに、5年もかかったんだ。
もうこれで、今までのように恋愛相談をしてもらえることはなくなった。
今まで通りの付き合いはできない。
でも、それでいいと思った。
自分の気持ちは伝えた、思い残すことなんかない。
これで晃汰との関係が終わってしまっても、きっと後悔しないと思う……。
沈黙が続く。
それから、晃汰が両手で顔を覆ってずるずる座り込んだ。
また沈黙が流れる。
「……晃汰?」
「……まさか女子から壁ドンされる日が来るとは思わなかった。
あと、海咲イケメンすぎ」
「え?あっ」
言われて気づいた。
これって今はやりの壁ドンの逆バージョンだよね。
勢いに任せて、かなり大胆なことやっちゃってた……今更のように恥ずかしさがこみ上げてくる。
でもおろおろするのは恰好がつかないから、なるべく堂々としていようと心掛けた。
しばらく「あー」とか「うー」とか「そっかあ」とか、無意味に呟いていた晃汰だったけど、ふいにそれをやめて笑い始めた。
「な、なにがおかしいのよ?」
「悪い悪い、そうじゃなくて、海咲がかっこいいなって思ってさ」
「は?」
「俺みたいにうじうじしなくて、スパンって告白できて。
お前が男だったら女子にモテただろうな」
褒めてるんだかけなされているんだか微妙だ。
殴りたい衝動に駆られたがぐっとこらえる。
大きく息を吐き出して、晃汰がゆっくり立ち上がった。
真面目な顔つきであたしを見つめる。