『へるぷ』
「……で、荷物持つよって言ったんだけど断られてさ、それでちょっと強引に奪ったというのか……。
なあ、俺しつこかったかな?」
「うーん、言い方にもよるけど、でも荷物持ってもらえて嫌がる女の子はあんまいないから、そこまで気にしなく
てもいいんじゃないの?」
「本当に?じゃあ俺セーフ?」
「晃汰のこと眼中になかったら、アウトもセーフもないんじゃないの?
あ、眼中になかったら100パー論外ってカテゴリーにぶちこまれてるか」
「ええっ、どうしよう、俺もうだめだ……」
「だーいじょうぶだって。
たぶん水野さん、あんたのことは一応視界には入ってると思うよ。
こんだけアプローチしてきたし」
言いたくない、こんな言葉。
「そうかなあ。明日練習のとき避けられたらどうしよう」
「それ聞いたら絶対ダメだからね。何ともないって考えて、次から直すよ」
「りょ、了解っす……それでさ、今度の日曜、映画に誘おうかなって思ってるんだけど」
聞きたくない、そんな言葉。
「お、いいじゃんいいじゃん。積極的でいいよ、晃汰」
「どう誘ったらいい?いきなり2人っきりでとかハードル高すぎてやばいんだよ」
「自分で考えたデート計画でしょ」
「でっ……!お前、そういうのサラッと言うのやめろよ」
「はあ?どう考えてもデートじゃん、LINEするの?それとも直?」
「だからそれを聞きたくてお前に電話したんだよ」
お前に電話したんだよ
さらりと言われた一言で、あたしの胸が高く鳴った。
もちろん、そこにあたしが期待する意味がこめられていないことは分かっている。
でも、嬉しいという気持ちは抑えられない。
それも隠すのは得意になったけど。