『へるぷ』
高2のとき、同じ部活の先輩から告白されて、少し悩んだ末あたしはお付き合いをすることにした。
嫌いな先輩じゃなかったし、先輩を好きになれば晃汰への気持ちを忘れられると思ったから。
要は利用したのである。
一緒に居るのは楽しかったけど、あまり長続きしなかった。
手をつないでも、キスしても、どうしても晃汰のことが頭から離れなかったのだ。
ここに居るのが晃汰ならよかったのに……気付いたらそんな風に考えてしまっている自分がいた。
そんなのは先輩に失礼すぎるので、あたしは晃汰の存在は伏せたまま別れ話を持ち出した。
先輩がすんなり受け入れてくれたのは、きっとあたしの気持ちに気付いていたからなのかもしれない。
それでも根掘り葉掘り聞いてこなかったし、卒業するまで仲良くし続けてくれた。
もうすぐ二十歳になるけど、付き合ったのはその先輩だけだ。
高3のときは、晃汰も勉強に専念すると言って、彼女欲しいとか考えなくなっていた。
当然メールも電話もぐっと少なくなり、あたしは初めて、本当の意味で晃汰と離れた。
これで忘れられると思った。
でも、離れれば離れるほど、好きという気持ちが強くなっていった。
たまに届く『模試どうだった?』『英語ピンチだから教えて』というメールが飛び跳ねるくらい嬉しく感じたし、
たまに学校で姿を見かけるだけでどきりとした。
会って話をした後は胸がほっこりと温かくなった。
年が明けてからは、そんなやり取りもしなくなったけれど。