『へるぷ』
そしてそのまま受験期が終わって、あたしたちは高校を卒業した。
あたしはずっと志望していた、東京の国立大学の教育学部に進学することになっていた。
だけど晃汰がどこへ進学するのか知らないまま、学校の制服を脱いだ。
携帯が故障して連絡手段を失ったというのもあるけど、今までずっと晃汰からのメッセージを待つだけだったから、自分から動こうという勇気が出なかったせいである。
このまま晃汰への気持ちを引きずっていくのかな……ううん、きっと新しい場所で新しい恋ができるはずだ。
そう考えて、学務手続きをしに引っ越したマンションから大学へ向かった。
「あれ……もしかして、海咲?」
その帰り、立ち寄ったキャンパス内のコンビニで偶然晃汰と再会した。
制服を脱いだ晃汰は大人びていてかっこよくて、あたしは思わず1、2秒くらい見とれてしまった。
「え、うそ、晃汰!?」
「やっぱり海咲だ、お前なんでここにいんの?」
「そういう晃汰こそ……」
「俺、ここの理工学部に受かったんだ。言ってなかったっけ?海咲学部どこ?」
「聞いてない。あたしは教育学部……」
「まじかよ、先生になるのか。でも童顔だから生徒と間違えられるんじゃねえの?」
「ちょっと、何それ」
「あはは、冗談だって。その身長なら思われねえよ。
しっかしまさか海咲とおんなじ大学にいたとはな……卒業までよろしくな」
「う、うん……」