『へるぷ』
信じられなかった、でも嬉しかった。
広いキャンパスに晃汰がいる、それだけでちょっと憂鬱だった新生活に期待できた。
学部が違うとカリキュラムも全く違うので、同じ授業に出たことは一度もない。
サークルもバイトも別々で、高校のとき以上に会える機会はなかった。
遊びに誘う勇気がなくて、あたしは晃汰からの連絡を待つばかりだった。
受験戦争が終わったことで、晃汰は恋愛モードに戻ったらしい。
また、以前のように『へるぷ』というメッセージが、今度はLINEで届くようになった。
このメッセージを拒否したら、晃汰と関わるチャンスがなくなってしまう。
そう考えると、嫌でも相談に乗るしかなかった。
状況は今も変わらない。
あたしは相談されるたびに、晃汰が同じサークルに所属している水野さんという女の子とくっつく方法を一緒に考えている。
考えたくないと叫ぶ心に蓋をして、『好き』と伝えたがる口を縫い付けて、今まで通り兄弟みたいな態度で、あいつと接している。
あいつが恋愛相談を持ち込める場所。
このポジションを絶対に放したくなくて、あたしは心で泣きながら晃汰の恋を応援した。