【年下彼の恋愛事情】
金髪の彼が手に取っていたのは、二種類の女性ものの香水だった。
どちらも人気上位にランクインする商品だ。
「これとこれ、どっちにしようか迷っててー」
「彼女さんにプレゼントですか?」
「彼女・・・・・・んー、まあそんなとこかなあ」
こんなイケメンだったら彼女がいて当たり前、か。
こっちの子はどうなんだろう・・・・・・って、本当に買い物付き合わされて暇そうに携帯画面眺めてた。
「イメージに合ったものでいかがですか?こちらのフラワー柄のボトルの商品は、ジャスミンを使っていて大人っぽい方に非常に似合うと思います」
「ふーん、そっか。なあ、春人、どう思う?これ合いそうじゃね?」
「あ?カスミちゃんだっけ、いいんじゃん、年上なんだろ」
年上彼女持ちか、最近の若い子もやるなあ。
「カスミじゃなくてナオミちゃん!お姉さん、これ買いまーす」
「はい、ありがとうございます」
悩んでいるお客さんがいれば、一言声をかけてあげる。後押ししてあげる。売上も大事だけど、誰かの思いに共感して一緒に考える、それも接客で大事なことだと思う。
それでお客さんが喜んでくれるなら、私も自然と笑顔になれる。
「それにしてもお姉さんも可愛いね。いくつ?今度デートしよ」
時には苦笑いになることもあるけど。
お姉さんもって、それは彼女と比べているの?
それに今、彼女さんへのプレゼント買ったよね?なんでこんなナンパじみたことされてるんだろう、私。
友人ならこの金髪の彼を止めてよ!・・・・・・って思って黒髪の彼をチラッと見ると、
「・・・・・・」
え、なに?
彼の黒い瞳が私を捕らえていて、一瞬目を逸らせなくなった。
それほどまでに、彼は表情が固まったまま、私の顔をじーっと見ている。
私の顔に何か付いてる?それとも思いっきり苦笑いしてたのがバレた?
「あの・・・・・・何か?」
「・・・・・・あ、いえ。なんでもないっす・・・・・・」
そう言って彼はスッと目をそらした。その表情は少し赤くなっているように見えて。