クールなお医者様のギャップに溶けてます
出会い
「亜樹せんぱぁーい。310号室の患者さんの採血終わりましたぁ〜。」

短髪で背が高く、ガッチリした体型の後輩がナースステーションに入って来た。

「ありがとうー。次はそれ検査室に届けて来て。」

後輩の語尾を伸ばす特徴ある口調を軽く無視して、手に持っているカルテを確認しながら指示を出す。

採血の次は超音波検査と内視鏡検査か…。
午前中は外来の方の予約がいっぱいだから午後一番で移動させないと…。

うーん、と時間の配分に悩んでいると先程の後輩が検査室から戻ってきて私の側にまとわりついてきた。
図体が大きいから目線を向けなくても視界に入る。
立ったまま私の周りをウロウロしている姿はまるで子供だ。

「お疲れ様。もう帰っていいよ。当直明けでしょ?ていうかクネクネするなっ。」

「えぇ?クネクネなんてしてませんよぉ。」

言うそばから体をさらにクネらせている。
同僚はみんな見慣れたものだからなんとも思わないけど、初めて見た患者さんは驚く。

「こうちゃんにはワンピース型のナース服を着させたいよね。」

同期の花絵が苦笑いを浮かべながら後輩に近付き、パンツ式の白衣を引っ張る。

「えぇーひどぉーい。これでもメンズなのにぃ。」

「メンズならメンズらしくしろ。」

怒ると「こわーい」とか言って花絵の後ろに隠れる。

まったく、朝からなんなのよ。
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