クールなお医者様のギャップに溶けてます


「お先に失礼しまーす。」
日勤帯のスタッフに挨拶をしてロッカーへ走る。

先生はまだ帰りそうになかったからその間に急いで化粧に取り掛からなきゃ。

「あら、珍しいわね。本山さんが化粧をして帰るなんて。」

一緒に当直だった先輩看護師が更衣室に入ってくるなり声をかけてきた。
そんなにマジマジと見られると照れちゃうんですけど。

「当直の時はすっぴんですけど、今日はこのあとちょっと予定がありまして。」

ただ化粧してるだけなのに、言う必要もない言い訳までしちゃったよ、私。

「クリスマスイブだものね。イイわねぇ、若いって。でも、山田さんのお孫さんとはダメだったんでしょ?」

気持ちいい位にストレートに言うな〜。
その位の方がいいけど。

「山田さんは関係ないですよ。パーティみたいなもんです。」

嘘をつくのに抵抗があったけど、これ以上詮索されては困る。
メイク中にマスクは出来ないから表情を隠せないし。

すると先輩看護師が髪を結ってくれると言い出した。

「私、よく娘の髪を結ってあげるのよ。髪は任せて、ほら、あなたはメイクに集中しなさい。」

「あ、ありがとうございます。」

そして、なんだかんだ言いながらメイクまでして貰い、鏡の中の自分は見違える程変わっていた。

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