クールなお医者様のギャップに溶けてます
「山田さん!」

「おぉ!亜樹さん、おめでとう。すごく綺麗じゃ!」

「本当に。まるで天使のようですね。」

相変わらずサラっと言うなー。

「約束果たせて良かったです。」

退院前、花嫁姿を見せて欲しい、と言っていた山田さん。
その後、訪問看護が起動に乗り、私が山田さんの自宅へ行く事になった頃、一度危ない状態になった。
でも、私の花嫁姿を見るまでは頑張ると言って、本当に本当に頑張ってくれた。

お孫さんの都合上、夕方でないと外出出来ない山田さんに合わせて私はもう一度白いドレスに着替えた。
こんなに喜んで貰えるなんて嬉しい。

「おめでとう。亜樹さん。式に何もしてやれずにすまないなぁ。」

「いえ、お気持ちだけで十分です。それにこうして会いに来てくれたじゃないですか。」

「おぉ、いいもの見れた。長生きするもんじゃのぉ。」

「お孫さんの結婚も見届けなきゃダメですよ。」

結婚を半年後に予定している山田さん。
元気でいて下さいね、と孫に声を掛けられれば、山田さんは大きく頷く。
二人とも幸せそうだ。

「そうじゃ、亜樹さん。わしからお祝いがあるんじゃ。」

「そういうのはいいって言ったじゃないですか!」

「いやいや、そういうもんじゃない。さぁ、あれを。」

お孫さんが渡してくれたのはカードタイプのキーだ。

「ここのホテルはワシのもんじゃ。特別なスイートを用意した。今日はそこに泊まりなさい。」

「え?」

スイートの宿泊はウェディングのプランについていたから、泊まる予定ではいたけど、どういう事?

「この特別室はプランに入っているものとは違います。プランのものは有効期限が一年ありますからまた別な機会でお使い下さい。」

「本当にいいんですか?」

「あぁ。気にするな。こんな老いぼれでも会長じゃ。」

ケッケッケッといつものように笑う山田さんは元気そう。
無理してるわけじゃなさそうで、安心した。

「ありがとうございます。」

「亜樹さん、幸せにな。」

「はいっ!」



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