クールなお医者様のギャップに溶けてます
青木さんに連れられて来られたのは研修を受けた内視鏡室だった。

「懐かしいでしょ。でも、あなたには嫌な思い出になってしまったのよね。」

「…」

「あの時本山さんがした行動は間違ってないわ。間違っていたのは私たちの方。あの後、神野先生に呼び出されて怒られたの。」

フワリと優しい顔で笑う青木さんからは恨みのある様子は見受けられない。
懐かしそうにしている。

「あの頃の私たちは、何も言われなければそれで出来てるものだと思ってた。ドクターに怒られる事も、指導される事もなかったし。」

今思えば、神野先生が気付いて欲しいと思っていた事は業務に支障がある事ではなかった。
検査は滞りなく進んでいたし、担当医がやりにくいと感じる事は各々が直接看護師や技師に言っていた。

その中で神野先生が自分たちで気付いて欲しいと訴えていたのは、不安を持っている患者さんのためにしてあげなければいけなかった事。

神野先生は患者想いの先生だった。
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