クールなお医者様のギャップに溶けてます
「け…す…相手が…のは本当か?」

「は?」

声が小さ過ぎて聞こえない。

「結婚する相手がいるのは本当か、と聞いたんだ。」

「それは違いますけど、合ってます。」

「どういう事だ。」

睨まないでよ。

「さっき藤井先生と話してるの聞いたんですよね?結婚相手ではないですが、結婚相手になるかもしれない人と今度会うんです。」

「なぜだ。」

なぜ…?
先生を忘れるためだけど、そんな事言えるかっ。

「私が誰と付き合おうが誰と結婚しようが先生には関係ないですよね?」

「…」

無視かよ。
限界に寒くなってきたし、無性に腹が立ってきた。
先生の横を通り過ぎ、帰ろうとしたら腕を掴まれる。

「待ってくれ。話しがある。」

「いい加減にして下さいっ。私、知ってるんです。そうやって関心ある風に見せてても、先生は実際に私の事、何の関心もないんだって、知ってるんですからっ。」

「何を言ってる?何を聞いたんだ?」

しまった。
言うつもりなかったのに。これじゃ、盗み聞きしてた事がバレバレだ。
今更口を押さえても意味ないのは分かっているけど、これ以上は話せない。

ダッシュで逃げる。

中学、高校と陸上部で短距離選手だったから瞬発力には自信があった。
絶対に追い付けないはず。

それでもドアノブに手を掛けた時、少し気になって振り返れば、先生はさっきいた日向に動かず立っていた。

やっぱり追い掛けて来てはくれないんだね。
少し期待して振り向いた自分が情けない。

先生の行動は相変わらず謎だらけだけど、私に気持ちが向いてない事だけはちゃんと理解出来た。
未練がましく先生に期待するんじゃなくて、早く先生を忘れなきゃ。

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