クールなお医者様のギャップに溶けてます
「私はもう一つ賭けをしています。」

「それは?」

「私が本山さんと会い、彼女を忘れられるかどうかです。」

「それで、どうですか?」

「思っていた以上に本山さんは素敵で、本山さんさえ良ければ付き合って欲しいと思います。でも、どこかで彼女の事が気になっているのもまた正直な気持ちです。」

この人は正直で優しい人だ。
私を傷付けないように、でも、弁護士さんの方が良いと分かるように言ってくれる。

「彼女にはここにくる前に会い、本山さんと会う事を伝えました。『勝手にすれば』と怒られてしまいましたが、怒るという事はもしかしたら前進出来るのではないかと期待しているのです。」

「それもまた賭け、ですね。」

「はい。ただ、本山さんを巻き込んでしまい本当に申し訳ありません。本当に。」

机に頭がつくんじゃないかと思う位、頭を下げる山田さんは悪くない。

山田さんの話しを聞いている間、自分自身に重ねてみたら、先生の事を選ぶ自分に気が付いた。

先生が他の人を好きでも、山田さんがどんなに素敵な人であっても、私の気持ちは先生に留まったまま。
簡単に忘れられない。
私は先生が好きだ。

山田さんが正直に話してくれたように、私も先生の事を話さなきゃ。

するとちゃんと話しをした方が良い、と言われた。

「物事にはタイミングがあります。それを逃すと取り返しがつかなくなりますよ。」

「そうなんですか?」

「まぁ、人の事を言える立場ではないのですが。」

あ、ようやく笑った。
この人は笑顔が似合う。
それを教えてあげると嬉しそうにまた微笑んだ。

「最近は彼女といてもあまり笑わないんです。彼女も笑わないですし。本山さんの事が気になったのはその笑顔のせいかもしれないですね。」

「あ、ありがとうございます。でも、このままじゃダメですよ。」

「そうですね。ダメですよね。前みたいに笑えるようにならないと。私の理想は笑顔の絶えない恋人なので。」
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