クールなお医者様のギャップに溶けてます
「運命の相手、なんて非現実的な言葉は言いたくなかったが、それが俺にとっては重要だったんだ。」

今日二度目の運命論だ。

「俺には三年前から婚約者がいた。父親が決めた相手だ。もちろん反対したが、結局、女なんて誰でも良かったから引き受けた。だがその直後、君に出会い、君を知る事で気持ちが変わった。」

「あの時の私はひどいもんでしたよ?先生には言いたい放題でしたし、雰囲気悪くするし…。」

先生に誘われた勉強会に行かなければ今でもあの日の出来事がトラウマになっていたと思う。

「確かにあの時はスタッフと気まずい関係になっていたな。先輩看護師の一挙手一投足にビクビクしていた。でも、患者さんには絶対に不安な顔を見せなかった。凄いと思ったよ。ただでさえ顔に出やすいのに。そしてその時に見た笑顔が忘れられなかった。」

先生は気になって翌週も内視鏡室の様子を見ていたらしい。
見られていたなんて、全く気が付かなかった。
それ位自分の事で精一杯だったんだ。

「それからすぐに父親に好きな人がいると言った。反対されるかと思ったが、『俺が再婚した36になるまでにその女性を連れてくる事が出来たら認めてやる』と言ってくれた。ただし、ダメな場合もあるだろうから政略結婚の相手とは今まで通り付き合え、と。
学会の予定を入れられたり、無理難題を押し付けられて君と会う機会さえ作れなかったが、こうしてまた出会えた。そして俺は君にますます惚れていったんだ。」

先生が一歩ずつ私に近付いてくる。

「君が好きだ。俺のそばにいて欲しい。」

私を、私だけを見つめるその目に吸い込まれそうになる。
思わず「好き」と言いたくなるけど、まだ信じられない。
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