クールなお医者様のギャップに溶けてます
「…という訳なのですが、山田さんのお孫さんだけが悪い訳ではないという事をご理解頂けたでしょうか?」

「あぁ。なにやら複雑な感じじゃが…。」

お互いに好きな人が他にいて、私の方はその人とお付き合いする事になりました、なんてすぐに理解しろ、という方が間違ってる。
山田さんが腕を組んで考え込むのも無理はない。
それでもさすが何千人の社員を一同にまとめ上げてきた人だ。
わずかな時間で理解を示してくれた。

「わしが若い頃には考えられんけど、孫も亜樹さんも今を生きてるんじゃなぁ。」

「本当にすみません。謝るべきは私です。」

「いや、いいんじゃよ。わしはな、孫にはもちろん、亜樹さんにも幸せになって欲しいんじゃ。亜樹さんには感謝してるんじゃ。わしのためにマッサージオイルの提案をしてくれたのは亜樹さんなんじゃってな?今では他の患者も喜んでおる。それに亜樹さんはいつも笑顔だ。入院生活なんてただ辛いだけじゃが、亜樹さんの笑顔は人を幸せな気分にしてくれる。こんな老いぼれに惚れられても迷惑じゃろうが、わしは亜樹さんが大好きなんじゃよ。」

「山田さん…。」

努力は裏切らない。そう教えてくれた先輩に感謝する。

嬉しくて、私の目に涙が溜まったのが分かったんだろう。
山田さんは手を伸ばし、頭を撫でてくれた。

「亜樹さんが幸せならもう何も言わん。でも、何かあれば力になるからな。それ位の力はあるから。」

「ふふ、お孫さんと同じ事を言うんですね。」

「そうか?孫はわしと同じ事を言ったのか。そりゃ面白い。」

ケッケッケッという山田さんの笑いにつられて私も笑うと山田さんはさらに笑顔になってくれた。

「その笑顔じゃよ。亜樹さんはいつも笑顔でいておくれ。」

「はい、本当にありがとうございます。」

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