碧い人魚の海
「彫師(ほりし)のところか焼印で済ますかわからんが、登記済みならその可能性がある。もし未登記なら登記してからになるから何日かは余裕があるが」
「確かに数日余裕があったところで、さほどマシだとも思えないね」
舞姫は難しい顔になって、腕組みをした。
「ていうか座長はケチだから、絶対焼印で済まそうとするよ。タトゥーだと費用が10倍以上違うだろう。市場に連れて行って人魚を売る気まんまんだったときだったらわからないけど、このまま見世物小屋で働かせる気なら、服で隠れる部分に焼きゴテのあとが残ろうが関係ないと思いそうだね。まあタトゥーだからマシだってもんでもないだろうけどさ。少なくとも見た目はだいぶマシなんだよね」
「その番号って、あたし以外の、買われてここにきた人たちは、みんな持ってるの?」
「鳥女などの特徴的な外見のものは、恐らくだが、登録だけだろう。だが、そういう特殊な場合を除けば、番号は皮膚に直接刻まれている場合がほとんどだ。昔からの習慣だったし、今じゃ逃亡や盗難を防ぐためのほかに、逆に自分で自分を買い取って自由の身になったときにそれを保障するための意味もあるんだ」
「自分で自分を買い取ることができるの?」
ナイフ投げは頷いた。
「できる。カルナーナの統治者が今の首相になってから、奴隷の自由化促進に関する法整備が進められたんだ。8年前に職種ごとの最低賃金が規定されたのに合わせて、自由民の被雇用者に支払われる給与から換算して、最低でもその10分の1は持ち主から奴隷に支払われることが義務づけられた。でもここではその法律は守られていない。あんたも知っていると思うが、ここでは買い取り組には給料は支払われない」
「どうして守られないの?」
そう疑問を口にしながらも、ルビーはカルナーナの統治者と呼ばれる男を思い出していた。
ルビーを捕えて船に乗せた、あの太った男だ。柔和にも見える満面の笑顔と、それにそぐわない鋭さを秘めた目つきを、ルビーは思い出した。風をあやつるルビーの術を、こともなげに封じたことも。
もう会うこともないだろうが、魔法に詳しい彼ならば、ルビーのアンクレットの意味を知っているのかもしれないという思いが、ふと頭をかすめる。
「確かに数日余裕があったところで、さほどマシだとも思えないね」
舞姫は難しい顔になって、腕組みをした。
「ていうか座長はケチだから、絶対焼印で済まそうとするよ。タトゥーだと費用が10倍以上違うだろう。市場に連れて行って人魚を売る気まんまんだったときだったらわからないけど、このまま見世物小屋で働かせる気なら、服で隠れる部分に焼きゴテのあとが残ろうが関係ないと思いそうだね。まあタトゥーだからマシだってもんでもないだろうけどさ。少なくとも見た目はだいぶマシなんだよね」
「その番号って、あたし以外の、買われてここにきた人たちは、みんな持ってるの?」
「鳥女などの特徴的な外見のものは、恐らくだが、登録だけだろう。だが、そういう特殊な場合を除けば、番号は皮膚に直接刻まれている場合がほとんどだ。昔からの習慣だったし、今じゃ逃亡や盗難を防ぐためのほかに、逆に自分で自分を買い取って自由の身になったときにそれを保障するための意味もあるんだ」
「自分で自分を買い取ることができるの?」
ナイフ投げは頷いた。
「できる。カルナーナの統治者が今の首相になってから、奴隷の自由化促進に関する法整備が進められたんだ。8年前に職種ごとの最低賃金が規定されたのに合わせて、自由民の被雇用者に支払われる給与から換算して、最低でもその10分の1は持ち主から奴隷に支払われることが義務づけられた。でもここではその法律は守られていない。あんたも知っていると思うが、ここでは買い取り組には給料は支払われない」
「どうして守られないの?」
そう疑問を口にしながらも、ルビーはカルナーナの統治者と呼ばれる男を思い出していた。
ルビーを捕えて船に乗せた、あの太った男だ。柔和にも見える満面の笑顔と、それにそぐわない鋭さを秘めた目つきを、ルビーは思い出した。風をあやつるルビーの術を、こともなげに封じたことも。
もう会うこともないだろうが、魔法に詳しい彼ならば、ルビーのアンクレットの意味を知っているのかもしれないという思いが、ふと頭をかすめる。