俺様系後輩からは逃げられない?!
そして
花火大会会場に到着
「食べ物買いに行きますか!」
「うん、何から買う?」
「うーん、あっ、飴売ってますよ。先あれ買いますか」
「うん、そうだね」
それにしても
やっぱりすごい人混み…
はぐれないか心配だな…
…
ってアレ?
言ってるそばからもうはぐれた?!
「ど、どうしよう…」
すると
グッと手首をつかまれた
振り返ると
「おいっ、離れてんじゃねーよ」
「…あ…ご、ごめん」
…正直、一瞬のことだったけど
すごく不安になって怖かった
だから、天原純の顔を見たとき
すごく安心した
「もう絶対離れんなよな」
そう言って天原純は
私の手をギュッと握ってきた
胸がキューっとなる
顔も熱くなる
辺りは暗くて
屋台の灯りが照らしているから
きっと顔が赤くなってるなんて
わからないかな
この気持ちには
覚えがある気がしてきた…
でも私はこの気持ちを認めたくない
……
「どの飴にする?」
「色んなフルーツがある!苺美味しそう!苺2つも付いてるんだ」
「苺飴とりんご飴一つずつください」
「えっ、私自分で払うよ!」
「いいから、黙ってろって」
なんだか悪いなぁ…
「はい、苺飴。溶け気味だから気を付けて」
「う、うん。奢ってくれてありがとう」
それを舐めてみると
思いの外、美味しくて
「美味しい〜!」
「一口ちょうだい」
そう言って私が持っている苺飴を
横からパクッと一つ取っていった
「……うん、美味い。まぁこれで俺もそれ食べたんだから、悪いと思わずに食べろよ」
…もしかして気付いてたのかな
私が奢って貰ったの気にしてるって
「…でも半分も食べちゃうなんて…」
「じゃあ、ほら。りんご飴あげる」
「え、それ自分のために買ったんでしょ?」
「今の苺で十分。ほら」
そうして無理矢理りんご飴を渡された
「…じゃあ、お言葉に甘えて頂きます…ありがと」
「ん」
…
それにしても
今日の天原純は出会った頃の俺様っ気が強いな…
いつも通りの時もあるけど…
「…何か今日いつもと違って、頼りになるっていうか、落ち着いてるね」
…シーン…
あれ、無視ですか。
別にいいけど…
どうせ独り言ですよ
すると、天原純は
「……だって今日みたいな日は何があるかわかんないし。それに、せっかく先輩浴衣着て来たのに…」
まぁ、さっき、はぐれかけたし…
てか、浴衣って言葉出たから
今更だけど訊いてみよ
「ねぇ、今更だけど…浴衣どう?」
うわっ、急に恥ずかしくなって来た
「い、いつもは何でも気が付かれるから…今日は言わないのかなって」
天原純はさっきと同じ様に一瞬黙っていた
「……似合ってる…かわいい……」
天原純の顔を覗き込むと
照れた顔で耳も赤い
「…いちいち言わせんなよ」
…反則でしょ
そんな照れて言われたら
顔立ちは可愛いはずなのに
男らしい顔つきをしてる
それに胸がまたキューっとなる
そして
他にも食べ物をいくつか買った
「そろそろ花火だから行くよ」
「あいてるかな〜」
私と天原純は
あれからずっと手を繋いでいる…
花火の会場はやっぱり混んでいて
座れそうな所が
全くというほど無かった
「…どうする?」
そう言った瞬間
ドーーーーンっっっ!!!
花火が上がった
見ると
本当に綺麗で
「…きれい」
って言葉に出ちゃうほど
天原純の顔を見ると
花火を愛おしそうに見ていた
それを見て胸がドキッとする私
この気持ち…
認めてしまった方がラクなのかもしれない
そう思った瞬間
「純?」
その声の方に振り返ると
そこにはキレイな女の人がいた
髪はダークブラウンな感じ
セミロング程で
片側に寄せて一つに結んでいて
若そうだけど私より年上な感じ
二重だけど落ち着いた目をしていて
いかにも大人な雰囲気がある
天原純は驚いた顔をして
「…希奈(きな)?」
…この人は一体誰?
胸がモヤモヤして苦しい
こんな風に私の心を乱す病は
きっと
『恋』なんだろうな…
私は天原純が好きなんだ
だからどうか
この女の人が
ただの知り合いであってほしい…