蜃気楼の国
舞台裏
少年は今朝、母を亡くした。

少年の母は生来病がちで、それは生まれ育った環境と彼女自身の体質によるものだと少年は理解していた。

それでも少年は世界を恨む。

倒れた母に見向きもしない世界を。腐って薄汚れた世界を。

二度と自分の頭を撫でることのない、冷たくなった母の手を握り、このまま消えてしまうことを願った。

けれども世界は中途半端に優しい。

冬のスラム街の太陽が完全に沈む一刹那前、少年はある物を発見する。

母が隠し持っていたルビーの指輪を。

少年はその時生きることを決めた。生きてこの世界に牙を剥くことを。

そして少年はルビーに魅せられて、世界を壊す旅に出た。
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