蜃気楼の国
青年は人殺しとして生きていた。

青年はそのことに疑問を感じていなかった。

自分は一生、そうして人を殺していくものだと考えていた。

自分を愛する人は現れず、自分も人を愛すことはない。

そうあると思っていたし、そうありたいと願ってもいた。

そうして生きていたある日、青年は雇い主を失った。

誰にも雇われていない青年は人を殺すことが出来なくなった。

青年の世界が静かに崩れ、彼はクォーツを見つけた。

そして青年は小さな誓いを自分に課した。

人を殺さず守って生きようと。

小さな鎖を引きずって青年は絆を探す。一生外せない鎖を。

そして青年はクォーツに誓って、人を守る旅に出た。
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