蜃気楼の国
少年少女は旅に出る
旅の四人は落ちている人、というものを初めて見た。

いや、スラム街育ちの煉都や戦争を知る澪は倒れた人は見たことがある。

それでも落ちている人、と表現する他ないくらいに道端に寝そべる女はすやすやと寝息を立てていた。

「えーっと。この女の人、倒れてる?のかな?」

長い沈黙の末に口を開いた少女に皆、曖昧に同意する。

それを受けて少女はゆっくりと女に近付いた。

「………凪。あまり変なモノを拾うのはどうかと思う」

女に近付く少女、凪帆の首の辺りから小さな少年が現れる。

彼の言葉を聞いて凪帆は少し悩む素振りをした。

「でもるーくん。こんな砂漠のど真ん中で寝てたら死んじゃうよ?」

「なら好きにするといいよ」

るーくんと呼ばれた少年はそれだけ言って姿を消す。

凪帆は女に近づくと肩を揺らした。
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop