蜃気楼の国
その質問に少年、煉都が真っ先に反応する。

「俺は煉都。で、こっちが」

黒い目を細めて彼は肩の上の石霊を見る。

赤髪に赤目の幼い石霊はぴょんっと煉都の手の平に飛び降りた。

「で、あたいがルビーの紅玉だよ!」

二番目に少女が口を開く。

「私は凪帆っていいます。で、こちらはっ」

凪帆の言葉を遮ろうと石霊が彼女の黒い髪を引く。

「ぼくは瑠璃。ラピスラズリでっ、って凪!痛いっ」

仕返しに青緑の髪を引っ張られ青の瞳に涙を浮かべる瑠璃に女は微笑む。

「僕は澪……、水?」

続けて青年が言い、自分の腕輪に目を落とす。

それに合わせて死に装束の石霊が姿を見せた。

「わたくしはクォーツの水晶と申しますわ」

長い髪を揺らして水晶が礼をすると皆の視線が一つに集まる。

凪帆の後ろに隠れている、先ほど女をぶっ叩いた幼い子に。

視線を感じて彼女はおずおずと顔を出した。

「わ、妾は綾。………兄さま、助けて」

名前だけを言うと綾は虹色の髪をフードに押し込み再び隠れる。

そして金色の瞳を潤ませて石霊に泣きついた。

応えて杖から石霊が飛び出る。

「おれはダイヤモンドの金剛。綾の、その、兄貴みたいなことをしている」

「で。あんたは誰だ?」

一息おいて金剛は薄い水色の目で女を見ながら皆の疑問を口に出す。

女は微笑みを全く崩さずにその質問に答えた。

「瑚城、です。そしてこの体には石霊が宿っています」
< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop