誘惑して、キス
「誰だよ、コイツにこんなに飲ませたのは」
「こんなにって言っても、彼女これがまだ二杯目ですよ」
「ったく、」
ぼうっとする頭で先生ともう一人の彼、……名前、なんだっけ……、とにかく見習いの彼が話しているのを見つめる。
すると急に先生が振り返った。
「せんせ、どっちですか……?」
鋭い目で見つめられる。
正確に言えば見つめられるわけではないのだけれど、いいのだ。
今はこんなに鋭い瞳をしているけれど、お仕事中はとんでもなく優しくなることを私は知っている。
出来たら、私もあの優しい瞳で見つめてほしいのだけど。……今は難しいみたい。
「せんせ、」
「あー、もうお前はこれ以上飲むな」
「……まだ二杯目です。」
「だったら尚更だ。学生でもねぇんだから梅酒なんかで酔っぱらうな」
「こ、これは、あんず酒です!」
変わらねぇよ!、という突っ込みを受けるがそれは全然違うと思う。
梅酒よりあんず酒の方が何倍もおいしいのに。
「……せんせーの好きなタイプは、どんな人ですか?」
めげずに隣に座る先生に視線を向けると、先生は大きな手でジョッキ傾けながら、美味しそうにビールを飲んでいた。
喉仏が上下するのを見て、何故か私の顔が火照る。
何でもない仕草でも、先生はセクシーなのだ。
無視されつつも、それに負けずに見つめ続ける。すると先生はやっとこちらに目を向けてくれた。
と言っても、視線だけだ。