誘惑して、キス


「え、えろ……」

……えろい女!!

何それ、どういうこと?えろいって、突然脱ぎ出しちゃうとか!?そ、そんなのムリだ……。

でも先生のためなら……、いやいややっぱりそんなこと。

様々な考えが、頭をぐるぐると巡る。


「ちょっとぉ、先生ったらサクラちゃんに何言ったのよぉ」

「サクラちゃん、顔真っ赤よ?」

お姉さま方のそんな会話を聞き取る余裕もなかった。だって今、私の頭の中はエロで埋め尽くされているのだから。


……えろい女、そうか、どうやってなれるかはわからないけど、目指してみようかな……。

そんなことを考えながら、目を閉じる。壁に背中を預け、深呼吸。

あぁ、本当に今日は酔ってしまったみたいだ。

「おい、寝るなよ」

大好きな先生の声にも今は反応出来そうにない。

私の意識はゆらゆらと旅に出るように薄くなっていく。行き着く先は、どこだろう。


最後に耳に入った先生の声を、私は理解することが出来なかった。








「おい起きろ」

ゆらゆらと揺れている。まるで揺りかごのようだ。

「おい」

声が聞こえる。私の大好きな声。低くて、優しい声。

「いい加減にしろ」

「……はっ、」

私を見つめる優しい目、……と言いたいところだけど、今は全く優しくない目をしている。

私も仕事中の、あの優しい目で見てほしいのに。


「子どもじゃないんだから、すぐに寝るクセやめろ」

「……だって、お酒飲むと眠たくなっちゃって」

< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop