この甘き空の果て
蒼天の覇王
ドゥンッ!
大空で突然、大気で出来た壁が鳴った。
なに!?
なんて、思う暇も無かった。
地平線の果てまで続くサトウキビ畑の真中に立つ、わたしの真後ろから、最新型の戦闘機が一機。
超低空飛行をして来たかと思うと、目の前で音速を越え、急上昇して行ったんだ。
飛行機はすぐに、遥か上空を飛んでいる味方の飛行機群の中にまぎれてしまったけれど。
わたし、見た。
雲一つ無い蒼い空へ、ただ一機。
翔け上がってゆく戦闘機のコックピットの中に、確かに亮(リょう)がいることを。
そして、わたしに向かって手を振った姿を。
「亮!」
なに笑ってるのよ、あの莫迦は!
本当に空が、飛ぶことが好きなヤツ!
叫んでも、決して声が、届かないことは百も承知で、わたしは叫ぶ。
「亮! ちゃんと、帰ってくるのよ!
わたしの設計した飛行機で、落ちたら承知しないんだから!」
目にしみるほど真っ青な空に十機の飛行機が、それぞれ一本ずつ白い線を描いて、西の空へ飛び立った。
そんな飛行機雲が消えても、わたしは畑の真ん中から一歩も動けず、ただ祈る。
亮……お願い。
今日も生きて、帰って来て。
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