この甘き空の果て
「ごっめ~~ん。
 楼羅(ローラ)ちゃんの機体、撃墜(おと)されちゃった~~」

 相変わらず、危機感の欠片も無い亮のしゃべり方に、わたしはその場でへたへたと座り込みそうになった。

 ここは、病院だ。

 バスケットコートが二面ほど取れそうな広い体育館に、負傷者を詰め込むだけ詰め込んだだけで、プライベートな空間は無い。

 野戦病院より屋根があるだけ、マシってところかな?

 各地の戦場で傷を負った負傷兵の皆さまがこぞって……三、四十人ほどが入院している。

 その中で、わたしが慌てて見舞いに駆け付けた相手、築島 亮(つきしま りょう)は、聞かされてた話よりも、大分元気だった。

 亮は敵の戦闘機を落とした数では誰にも負けない、戦闘機のパイロットだ。一流の撃墜王(エース)の彼は、英雄視されついでに病院でも厚遇されている。

 この設備の整って無い病院の中では、一番良いベッドに寝ていた。

 戦闘機同士の空中戦のさなか、機体に弾が当たり、海に落ちたんだ。

 そのとき、亮は、左の手足を根こそぎ欠損する酷いケガを負ってしまったんだ。

 でも、彼が生きて、笑っているなら、それでいいや。
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