この甘き空の果て
 子どもの頃はケガした鳥を拾って来ては、大事に世話をして空へ帰していた優しい子だったのに。

 亮は、わたしのために戦闘機に乗って、ヒトを殺す。

 空に溶ける蒼い機体色を好む、撃墜王。

 東国で英雄『蒼王』と呼ばれる亮は、きっと西国では悪魔の名前と等しかったに違いない。

 けれども、左の手足を無くして、なお。大空を自由に飛べる戦闘機は、この世に無いから。亮は事実上の引退だ。

 どんな姿になったとしても、生きてさえいてくれれば、それでいい。

「お疲れ様でした。大尉はゆっくり休んでくださいね」

 ほっとして笑うわたしに、亮は、ふわり、とほほ笑んだ。

「そうだね。
 でも、未来は自分で決めたいんだ。
 楼羅ちゃん。俺とこれから外に出ないか?
 ここでは、ちゃんと話もできないし」

 そんな亮の口調は軽く、傷も痛まないから、と主張する亮の言葉に、わたしは何も知らずにうん、とうなづいた。
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