この甘き空の果て
 


「俺に出撃命令が出てる。
 三週間後の西国本土の大空襲作戦に参加するから。
 楼羅ちゃんには、今の俺でも飛べるように、飛行機の調整をして欲しいんだ」

「……え?」

 思いがけない亮の言葉に、わたしは耳を疑った。

「出撃命令って!
 その身体で戦闘機を操縦できるの!?」

 確かに、亮は驚くほど回復していた。

 身体の半分を無くしていくらも経たないのに、今、彼は病院の前にある公園に出るべく。

 レンガ壁の続く通路を、松葉づえをついてゆっくり歩いてるぐらいだ。

 けれども、飛行機……特に戦闘機は、両手両足を使わないと安定して飛べない。

 発進と飛行中はともかく。飛行機の操縦は特に着陸が難しいんだ。

 戦闘は無事に終えたのに、帰りに着陸に失敗して命を落とすヒトもいるくらいだ。

 そのカラダじゃ無理だって騒ぐわたしに、亮は肩をすくめた。

「戦闘機で上下左右に動く空中戦(ドッグ·ファイト)は無理でも、真っすぐ飛ぶだけの爆撃機のパイロットならイケる」

「でも、着陸が!」

「ああ……俺、着陸しないし」

「ちょっと! 着陸しないって、どういうコトよ!?」

「俺………爆弾抱えたまま、爆撃機ごと敵国に突っ込むことになったんだ」

「そん……な」

 何でも無いコトみたいに、さらっと言った亮の言葉に、わたしは固まった。
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